柔軟剤が残った洗濯機をやめて、自分用の洗濯対策をとった話
2023年12月、冷え込みが厳しくなってきたある日、
これまで普通に使っていた洗濯機が、突然使えなくなってしまいました。
Tシャツや下着、タオルなど、いろいろな衣類を洗ってみたのですが、
干している段階からすでに違和感があり、
身につけた瞬間、体がジンジンするような感覚に襲われました。
何が起きているのか分からず、洗濯のやり方を変えたり、
何度も念入りにすすいだりもしましたが、状況は変わりません。
「どうして突然?」
困惑と戸惑いの中で、洗濯機を使うことそのものを
あきらめざるを得なくなりました。
思い返せば、これまで使っていた柔軟剤の成分が
洗濯槽に残っていたのかもしれません。
ほんのわずかな残留物にも、体が過敏に反応してしまったのだと思います。
仕方なく、洗濯板とオケを使って手洗いを始めました。
でも、真冬の水は冷たくて、
1回の洗濯で腕がパンパンになります。
特に脱水のために絞る動作がとてもきつく、
これを毎日続けるのは現実的ではありませんでした。

その後、簡易型の小さな洗濯機を購入。
風呂場で使うため、自分専用の洗濯機として活用することにしました。
ただしこれは全自動ではなく、
• 洗い → すすぎ層へ移す
• 洗い → すすぎ層へ移す
といった工程が2回必要です。
さらに、毎回この洗濯機を風呂場まで運ぶ必要があり、かなりの重労働でした。

肉体的にも弱っていたため、いろいろ考えた結果、思い切って風呂場の更衣室に小型の全自動洗濯機を設置することにしました。
棚を外し、土台を組み立て、ようやく設置が完了。
「洗濯をする」という、たった一つの生活動作が、こんなにも大きな負担になるとは――。
年末の忙しい時期に、それを痛感させられた出来事でした。

服を着られるようになるまでの試行錯誤
ある日突然、
これまで普通に着ていた服が、まるで「毒」のように感じられるようになりました。
クローゼットを開けた瞬間、
ツンとした防虫剤や消臭剤のにおいが一気に立ちのぼり、
その場で頭の奥をガンッと殴られたような衝撃を受けました。
「まさか服のにおいで、こんなに体が反応するなんて…」
信じたくない思いで何度か着ようと試みましたが、
症状はどんどん悪化するばかり。
泣く泣く、すべての衣類を処分しました。
お気に入りの服も、大切にしていたものも、もう着られません。

それからは、肌に直接触れるものだけでも安全なものを…と、
ネット通販で綿100%の衣類を少しずつ揃えていきました。
無印良品やGUの天然素材のものなど、
シンプルで安心できそうなものを選んで購入。
でも、新品の服もそのままでは着られません。
購入後は、まずミヨシの無添加洗剤で何度も洗濯。
何度も、何度も。
ようやく化学臭が抜けてきたかな…というタイミングで、
少しずつ身につけていきました。
服を着る――
それだけのことが、これほどまでに慎重にならなければならないなんて。
でも、こうして少しずつでも「着られる服」が増えていくことが、
私にとっては、回復の小さな一歩になっています。
自宅から化学物質を撤去した日
2024年3月ごろ。
この頃から、体にこれまでとは違う異変が現れ始めていました。
感情とは関係なく、突然、目から涙がこぼれるようになったのです。
「疲れてるのかな」と思いながらネットで調べてみると、
アレルギー反応の一種かもしれない、という情報が見つかりました。
とはいえ、すでに私は、そうした物に近づくだけで症状が出てしまう状態。
どうすることもできずにいると――
80を過ぎた父が、黙って立ち上がりました。
何も言わず、ただ淡々と。
家中を歩き回っては、ひとつひとつの容器を集め、
大きな箱に黙々と詰めていく。
あたりまえのことのように、
ひたすら手を動かし続ける父の姿に、胸が熱くなりました。
そしてある日、頭が混乱し、神経がピリピリと痛むような感覚に襲われました。
息苦しさも加わり、とても部屋にいられる状態ではありませんでした。
「この部屋の何かに、体が反応しているのかもしれない」
そう感じた私は、思いきって、
家の中にあった殺虫剤や洗剤、ペンキ、整髪料、消毒スプレーなど、
香りや成分の強い化学物質を中心に、できる限り処分する決意をしました。
その後、便利屋さんに何度も来てもらい、
軽トラックでまとめて処分していただきました。
化学物質を撤去したときの写真は残っていませんが、
その後、家財道具を大量に廃棄した際の様子は、写真に収めてありました。
以下は、そのときの画像の一部です。


このときはまだ、
自分が何の症状に苦しんでいるのか、はっきりとは分かっていませんでした。
ただ、
「このままではいけない」
そう思って動き出した行動は、
今振り返れば――
ほんの一コマにすぎなかったのです。
病名がわかってから、受診するまでの道のり
「体がジンジンする」「においが気になる」――そこから始まった
そんな症状を手あたり次第にネットで検索していたある日、
化学物質過敏症(MCS)という病気の存在を知りました。
「あれ…これ、自分のことじゃない?」
そう思った私は、すぐに都内や神奈川県内で診てもらえる病院を探し始めました。
しかし、どこに電話しても――
「化学物質過敏症には対応しておりません」
と、次々に断られてしまったのです。
化学物質過敏症に対応している病院を探して
化学物質過敏症に対応している病院を探す中で、
当時、有名だった「そよ風クリニック」の宮田先生は、すでに閉院していることが判明しました。
「どこなら診てもらえるのか」
わらにもすがる思いで、ネットをしらべまくった末、
ようやく候補をいくつか見つけることができました。
情報を一つひとつ確認し、悩みに悩んだ結果――
最終的に、以下の2つの病院に絞り込みました。
日野厚生クリニック(東京都日野市)
アレルギー科・環境症状外来(坂部 貢 先生)
https://hinokosei-clinic.com/about
湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)
免疫・アレルギーセンター(渡井 健太郎 先生)
https://www.skgh.jp/department/allergy-center/
最終的に選んだのは「湘南鎌倉総合病院」でした。
どちらの病院にも、化学物質過敏症に詳しい先生がいらっしゃいます。
日野厚生クリニックには坂部貢先生、湘南鎌倉総合病院には渡井健太郎先生――
いずれも、MCSの診療で知られる医師です。
ただし、問題は自分の体力。
父に車で送ってもらうとしても、長時間の乗車はつらい。
悩んだ末、より自宅から近かった湘南鎌倉総合病院の渡井先生に診てもらうことに決めました。
他にも検討した医療機関
京橋クリニック(東京都中央区)
https://kyobashi-clinic.com/
ウェルネスクリニック神楽坂(東京都新宿区)
https://wellnesskk.net/
山口内科ハートクリニック(東京都町田市)
https://www.yamaguchi-heart.jp/
湘南鎌倉総合病院での初診――希望と不安のなかで(2024年5月13日)
神奈川県鎌倉市にある湘南鎌倉総合病院・免疫アレルギーセンターを受診しました。
担当してくださったのは、渡井健太郎先生です。
発症の経緯を丁寧に聞いてくださり、
その後は、誠実でわかりやすい説明がありました。
「確立した治療法はまだない」と現実的な説明もありましたが、
決して突き放すことなく、多忙な中でも真摯に向き合ってくださる先生でした。
口調は淡々としながらも、患者のつらさをしっかり受け止め、寄り添おうとする姿勢が伝わり、安心感がありました。
その後の血液検査や治療方針についても、一つひとつ丁寧に説明してくださいました。
【治療についての説明】
診察の中で、先生から病気の仕組みについても説明がありました。
この症状はアレルギー反応ではなく、
脳の「海馬(記憶を司る部位)」が過敏に反応することが関係しているとのこと。
メカニズムとしては、慢性疲労症候群と似た特徴があるそうです。
また、血液検査では、ビタミンD・亜鉛・カルニチンなどが不足しているケースが多く、
それらをサプリメントで補うことで、1週間ほどで体調の改善を感じる方もいると教えていただきました。
なお、必要に応じて「リリカ」という薬が処方される場合もあるそうです。
【血液検査時の出来事】
血液検査のため、採血室に案内されました。
そこで、針を刺す前にアルコールで皮膚を消毒されそうになりました。
しかし、化学物質過敏症にとってアルコールは強い刺激物です。
皮膚に触れるだけでも、強い反応が出てしまうことがあります。
「本当に無理なんです」と必死にお願いしましたが、
看護師さんはお忙しかったこともあり、やや険しい表情に。
最終的には、「ほんの少量で」と頼み込み、なんとか対応していただく形になりました。
――今思えば、事前に先生から指示を出しておいてもらえばよかったと反省しています。
外来と検査部門が分かれている病院では、こうした対応のすれ違いが起きやすいと痛感しました。
原因は見えた、でも回復はこれから――検査結果と向き合って(2024年6月12日)
後日、血液検査の結果が返ってきました。
・ビタミンD:欠乏レベル
・亜鉛・カルニチン:不足レベル

やはり体内では、栄養バランスの大きな偏りが起きていることがわかりました。
「もしかしたら、これで原因が特定できて、一気に回復するのでは」
そんな淡い期待もありましたが――
現実はそう甘くなく、ここからがようやくスタート地点だったのだと痛感しました。
同じように悩む方へ
もし、同じように「原因のわからない不調」に悩んでいる方がいたら、
「自分だけじゃなかった」と、少しでも安心してもらえたら嬉しいです。
都内や神奈川県内にも、化学物質過敏症(MCS)に理解のある医師は確かに存在しています。
焦らず、自分のペースで。
小さな一歩でも、確かに前へ進んでいけますように。